「アイヌの結婚式」上映会レポート 2/8回

土曜日の会の「アイヌの結婚式」上映会に伊藤碩男さんをお招きにし、お話を伺いました。なお、音声記録の書き起こし、及び文章の編集は由井英が担当し、伊藤さんは書き起こしした文章を推敲し、加筆しております。

写真:伊藤碩男さん【民族文化映像研究所 所属】

作品:「アイヌの結婚式 」民族文化映像研究所/1971年完成/33分
土曜日の会 上映日:2018.5.19 Sat.
ゲスト:伊藤碩男 氏:「アイヌの結婚式」撮影カメラマン


由井:結婚式の中身についてお伺いしたいのですが、火の神様と水の神様が出てきました。特に火の神様がアイヌの人たちにとって、大事な神様ということですが、それは何故なのでしょうか。

伊藤:アイヌは多神教ですから、アイヌは日本人と同じように、あらゆる自然のものを神として考えている。その神様は「人間と同格」なんです。その点は内地の神様の位置付けとちょっと違う。同格ということは、神様はいい神様だけとは限らないということです。悪い神様、これはウェンペ(悪いモノ)というんですけど、その悪い神様が人間にたたる時には、その悪い神を懲らしめる、そういうこともするんですね。

火の神、水の神が人間生活にとって一番大事であるという意味はですね、火の神のことをアイヌ語で「アペ・フチ・カムイ」。アペは火です。フチはおばあさん、カムイ、神様。火がアイヌの生活で一番大事であるということはですね、地名として残してしまう。全部言わないで「フチ、フチ」っていうんです。それが富士山です。富士山は火の山です。火の神として湛えていた。これを愛称として「おばあちゃん、おばあちゃん」と呼んでいた。それがフチ。フチがフジに訛り、そこに山をつけてフジサンとなった。富士山を祀っている神社は浅間神社です。富士山をご神体として祀る神社ですよね。だからヤマトの言葉としては浅間神社なんです。「富士山というのはアイヌ語からきた名前ではないか」と地名学者の山田秀三先生が言っています。

地名のことになると、アイヌ語が内地にいっぱい残っているんです。特に東北の方が多いんですが、●●ベツ、●●ナイという言葉があります。ベツは川です。ナイは沢。水に関係しますね。アイヌは文字を持っていませんから、すべて口承です。

秩父ですが、長瀞のちょっと先に、風布(フップ)という村があります。アイヌ語だろうなあと思って、萱野さんに聞いたところ、「フップは松だよ」と言いました。松の木をフップというそうです。実際に風布の村に行ってみたら松が多かった。長瀞を流れる荒川の支流に赤平川という川があります。アイヌ語でいうと、赤はワッカ(水)、平はピラ、崖のこと。崖の中から湧き出てくる伏流水。それが流れ流れて荒川になっていくという、その赤平川というのはアイヌ語だなと思ったんですよね。

水を表す言葉も非常に似ていますね。ということは水が人間生活にとっていかに大切であるかということを表しています。それを神様にしちゃっている。

由井:この映画を見ると、アイヌの人たちの所作に目を奪われます。まるでスローモーションのようにも見えるゆったりとして幻想的な美しい所作です。例えば、女の人が鼻の下を人差し指ですっと撫でる仕草、あれにはどのような意味があるのでしょうか。

伊藤:よくわかりません。挨拶でしょうね。ああいう風に鼻の下をすっと撫でる挨拶は、アイヌ以外では見たことがない。それから男の人はやりません。男の人は、こう(両手で迎える仕草)。これは神様を迎える時も一緒です。人間同士を迎える時も一緒です。これは沖縄と一緒ですね。踊り。六調での手振り、あれは迎えるという所作です。

次回「日本文化のふるさと」を映画にしようと思った理由、へつづく…