写真提供(上)|©︎民族文化映像研究所

土曜日の会|ゲストスピーカー

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伊藤碩男

カメラマン
民族文化映像研究所 所属

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(全8回レポート)

映画「アイヌの結婚式」上映後の伊藤さんと来場者との質疑応答をまとめました。なお音声記録の書き起こし、及び文章の編集は由井英が担当し、伊藤さんは書き起こしをした文章を推敲し、加筆しております。

Q:撮影が1971年、今から50年近く前になります。その時点でアイヌの結婚式が7、80年間行われていなかった。なぜでしょうか。

伊藤:この映画の中でも言っていたようにですね、自分たちはアイヌであるということをやめた。アイヌ同士で結婚すると、生まれる子供たちはアイヌ。そのアイヌはシャモ、つまり内地の人間から差別される。ということで、アイヌであるということを止めようというのが、北海道のほとんどのところで起きていました。つまり日本人はアイヌを先住民族として受け止めていなかったということなんです。

日本に戸籍法ができましてね、その中にアイヌであるという記入欄はなかった。今もないです。従って、アイヌの人口がどのくらいあったのかはわからないんです。我々がこの結婚式を撮影した時点でですね、全道でアイヌが35,000人いるだろうと推定をしていました。もっといるはずだという考えもあったのだけれども、差別されるということもあって名乗ろうとしなかったアイヌも多くいたのではないかと思います。

差別されるというのはどういうことかというと、職業につけないんですよ。警察官になれない、役所にも勤められない。できるのは商売や農耕、そのぐらいしかできなかったんです。

日本政府は、アイヌに対し「日本人になりなさい」という同化政策を実行していった。明治32年に「北海道旧土人保護法」という法律を作った。これが平成9年に「アイヌ新法」が出来上がるまで適用されてきた。映画を撮影した地点では、法律的にも「北海道旧土人保護法」は生きているわけです。つまり当時はアイヌのアイデンティティーを否定する時代だったんです。ただ数カ所の村で、二風谷もそのひとつですが、「自分たちはアイヌだと、それは恥ずかしいことではない」と主張したのです。

映画に出てきた萱野茂さんは、後にアイヌ出身の参議院議員なる方です。有名なのは、国会でアイヌ語の演説をしたこと。北海道旧土人保護法をやめろという演説をアイヌ語でやったんです。誰もわかんないです。困ったのは議事録の速記者。そのとき記録されたのが日本の国会に唯一残されたアイヌ語の議事録です。つまりそういうような状況でした。

この映画は、アイヌであることを恥ずかしいと思っていた時代に、アイヌであることは恥ずかしくないよと言った村、二風谷の記録です。

Q:北海道旧土人保護法というのはどういう法律なんですか。

伊藤:北海道旧土人保護法というのは「アイヌを保護しましょう」という法律なんです。保護ってどういうこと? 明治時代に和人が盛んに開拓民として入って行くわけです。その人たちが必要なのは土地、農地なんです。政府は開拓民たちが土地を占領するとアイヌが困るだろうと考えた。そこで「平等に土地を分け与えましょう」ということにした。

土地をもらったアイヌは困っちゃたんですね。何もすることがない。彼らの生業は弓矢や槍でクマを獲るか、川でシャケを獲るか、これが生活の主体ですから。あとは山に行って山菜などを採取する。それで暮らしが成り立っていたんです。足りないものは内地へ行って交易をした。

北海道旧土人保護法が施行された頃には松前藩はアイヌの交易をやめさせていた。松前藩が交易を独占していたんですね。そういうこともあって平等にしようと。しかしそれは和人が考えた同化政策なんです。「アイヌであることをやめて、日本人になりなさい」と。これが一番大きい問題です。

具体的には学校を作る。アイヌの村の中にアイヌコタンの中に、学校を作る。これは政府の金で作るんです。しかしアイヌ民族は「劣等民族」と見なされ4年制。当時の内地の学校は尋常小学校と言っていましたけれども、これは3年制です。学校をアイヌコタンの中心に作りますから、これが同化政策の拠点になるんです。萱野茂さんもそこで学びました。学校の規則としてアイヌ語を使ってはいけない。文化の中心になるのは言語ですから。つまりアイヌ文化を否定する動きになっていくわけです。

(次回「富士山はアイヌ語 !?」へつづく…)


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2 thoughts on “アイヌの結婚式が行われてこなかった理由

  1. メルマガをありがとうございます。興味深い内容の映画で、事前に知っていたらぜひ観たかったと思いました。
    ところで、先生へのインタビューが途中で終わっていますが、続きはどこにありますか?あちこちクリックしてみましたが見つかりませんでした。どうぞよろしくお願いします。

    1. シバタ様

      アイヌの結婚式のレポートを読んでくださり、ありがとうございます。映画にも興味を持っていただいたとのこと、レポートの作り手として励みになりとても嬉しいです。レポートは全8回に分けて順次、サイトへアップする予定です。今回はその第1回目です。

      次回の第2回目は、6月10日前後を予定しております。またメルマガでご案内させていただきますのでもうしばらくお待ちくださいますようお願い申し上げます。

      ささらプロダクション 由井

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