土曜日の会|ゲストスピーカー

05

伊藤碩男

カメラマン
民族文化映像研究所 所属

12345・7・8
(全8回レポート)

「アイヌの結婚式」上映後の伊藤さんと来場者との質疑応答をまとめました。なお、音声記録の書き起こし、及び文章の編集は由井英が担当し、伊藤さんは書き起こしした文章を推敲し、加筆しております。

Q:私たちはこの映画を通してアイヌの側に立って物事を見ることができるわけですが、おそらくカメラに撮影していないもの、映画に残していないものがあるかと思います。そういったものも含めてアイヌの文化を見たときに、私たちにはどのような姿が見えてくるのでしょうか。うまく言葉にならないのですが。

伊藤:アイヌにとって私は邪魔者なんです。それはね、この映像の中でもいっているんです。「お前、邪魔だから出て行け!」と。映画を作った随分あとになってわかったんですがね。「ナンベ、タンベ、ラ」って言っているんです、エカシが。アイヌはそういう風に私たちを見ているわけです。撮影をしているときはそれに気がつかなかった。つまり私はね、ヤマト民族としてのアイデンティティーを持っていなかったということなんです。その場のムードに流されちゃった。萱野さんの言うように夢中になって撮影していた。「この映画の外側はどういう風になっているのか」というご指摘にはね、素直に「すみませんでした」と言うより他はありません。

エカシが「ナンベ・タンベ・ブラ」と言ったことは、同席していたアイヌの気持ちをすっきりさせたでしょう。エカシが「自分たちの気持ちを代弁してくれた」と…。私はその場で言葉が判らないから、退出することはしませんでした。

撮影の外側は見なくてはいけないはずですが、そんな余裕など現場ではありません、無我夢中で眼前の事象を追いかけることで精いっぱいです。カメラに撮影しなかったものを意識したとすれば、その場では間に合わなくても後日チャンスを探る努力はしたでしょう。その後のアイヌ関係の映画の何本かは、我々のものではなく萱野さんが意識したものを映画にしたんです。

Q:萱野さんとの出会いがなければ、この映画を作ることはできなかったわけですね。

伊藤:あり得なかったでしょうね。萱野さんとの出会いはね、先ほどお話ししたように、萱野さんが東京に出てきたときに呼び出された。呼び出されたのは僕じゃないんですよ。監督の姫田なんです。姫田が呼び出された理由があるんです。

萱野さんは姫田を信用できると思ったわけ。それはどういうことで信用したかというと、彼はテレビの取材で、アイヌのイナウを調査してこいと言われるわけ、それで、飛んで行ったのが二風谷の萱野さんのところ。その取材の仕方を見ていて、萱野さんは「こいつは信用できる男だ」と思ったのです。それで娘さんが結婚式をやりたいと言ったときに姫田のことを思い出したのでしょうね。「お前らくるなら、撮影させてあげるよ」という意味だった。でも口に出して言いませんよ、その代わりに「お祝いに来い」と。

(次回は「アイヌのお葬式」です。)


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