2015.10.22   2021.7.9【更新】 

文学忌という言葉があります。作家の命日を代表作や雅号などで名付け、生前の文学的業績を偲ぶそうです。例えば、こんな文学忌があります。河童忌は芥川龍之介、桜桃忌は太宰治、一草忌は種田山頭火、吉里吉里忌は井上ひさし。それぞれ、故人の人となりや仕事ぶりが感じられる文学忌ですね。

私やmicoさんがお世話になった人に、小泉修吉という人がいます。小泉さんというと、いつも思い出すことがあります。小泉さんには独特の語り口調があります。それは小泉さんと関わりを持った人なら必ず記憶に残っていることだと思います。その言葉や口調によって、我々はどれほど気持ちが軽やかになり、励まされてきたことか計り知れません。いま思い出してみても、小泉さんに会うときはたいてい映画を製作する上で難題をかかえ、どうにもならず、相談することが多かったからです。編集を繰り返すうちに作品の方向性を見失い途方にくれていたときや、これまで全く経験していないことに挑むにあたり二の足を踏んでいたときとか。

そんなとき小泉さんは豊かな太い眉毛を動かして、「いいですね〜 面白いですね〜」と朗らかに笑います。こちらが難題と思い躊躇している物事を小泉さんが先に、ぴょんと楽しそうに飛び越えてしまうように感じたものです。その小泉さんが亡くなり、まもなく1周忌をむかえます。11月7日(土)には、小泉さんの代表作、5作品がポレポレ東中野で一挙に上映されるそうです。お時間がございましたらぜひ、ひとつだけでも御覧ください。

あるとき、「土蔵にしましょう」と小泉さんが言いました。なんと社名を考えていたときのことです。「株式会社 土蔵です」と言ってニコニコしているのです。さすがに、「そんな名前にはしなくないな」と心で思いつつ、真意を尋ねるとご本人はいたって真面目に説明していたのを覚えています。いまでも「株式会社 土蔵」にしなくてよかったと思っています。ゴメンなさい、小泉さん。

文学忌にちなんで、小泉さんの命日を勝手にmicoさんと考えてみました。いろいろな案がでましたが「結悠忌(ゆうゆうき)」となりました。お名前の「修吉」の字画に近い字を添えてみました。生前にたくさんの人と人を結び、悠久の時の流れに身を委ね、人知を超えた取り計いや縁を導き、たくさんの素晴らしい映画をこの世に送り出してくださったことに対する感謝の気持ちを込めました。「いいですね〜 面白いですね〜」と笑っている声があの世から聞こえてきそうな気がします。

料理の写真は、小泉さんと会食したときのものです。小泉さんは「ささら」に行くのをとても楽しみにしていたと、のちに奥様から聞きました。「おいしいご飯が食べられるから」と。私たちの事務所では会議のあとみんなで、一緒にご飯を食べることがよくありました。こうして写真を改めて見ても、不思議と小泉さんが亡くなった気がしません。明日にでも姿を表してくれるような気配すら感じます。見守ってくれているということでしょうか。合掌。

       

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