2017.4.4   2021.7.6【更新】 

イラスト(上):近藤圭恵

人はなぜ獣骨を暮らしのそばに置き、祈りを込めてきたのか。骨には霊験がある。あるいは人智を超えた力が備わっている。こうした話はよく耳にする。しかしそれでも、なぜ骨なのかと問いたくなる。まず写真を見て欲しい。

オオカミの骨と数珠、護符の版木(東京都青梅市)

御嶽山麓の旧家の神棚に祀られていたニホンオオカミの骨。頭骨の下に見えるのは、下顎と骨盤だ。これを見るとオオカミの骨なら何でもいい、というわけではなさそうだ。むしろ特定の部位を「選んでいる」ように思える。それぞれ獣の生命力が宿ると考えられる部位だが、特に骨盤は珍しいのかもしれない。骨の状態はどれもよく、端正で、とても美しかったことを覚えている。 頭骨は黒ずんでいるのがわかるだろうか。囲炉裏の煙で「自然に」燻されたとも、祈祷に使うため「故意に」焚きしめたとも聞く。骨は削りとり、薬として服用したという。そのため原型を留めていない骨もあるほどだ。骨だけでなく数珠や版木も保存されていた。版木には武蔵御嶽神社の文字が刻まれている。御嶽の御師がお札を刷り、祈祷に使ったものなのだろう。

版木や数珠が骨と共に発見されたことは、山びと(御師)と里びと(お百姓)との関わりを物語る証しと言える。 オオカミの骨として祀られるものの中には、山犬の骨と鑑定されたものも多いという。我々の先祖がヤマイヌとオオカミを厳密に区別していたのかという問題はあるにせよ、犬とオオカミを見分けることは難しいようだ。映画では、国立歴史民俗博物館の西本教授からニホンオオカミの鑑定の決め手となる「三つの特徴」を聞いている。そのひとつを紹介すると、オオカミは眉間から鼻筋にかけて凹まないのに比べ、犬の鼻筋は短く凹んでいるという。

【つづく…】


オオカミの護符 〜里びとと山びとのあわいに〜
2008年完成作品/114分
製作助成:文化庁
受賞:平成20年度文化庁映画賞 文化記録映画優秀賞 ほか
       

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