2017.4.12   2021.7.9【更新】 

写真(上):栗嶋公喜 氏 所蔵

「護符」のルーツは骨か?

「オオカミの護符」の撮影を始めた頃は、各地でこんなにもたくさん「護符」が発行されているとは思わなかった。関東甲信越、東海、東北、北海道…。こうして見るとオオカミ信仰の風習は「東国の文化」として根付いているように思える。西日本にはこのような風習は少ないように感じるが、実際はどうなのだろうか。

お札は土蔵の扉や玄関の戸口、台所などに貼り、畑にも掲げられる。盗難除け、火伏せなど「オイヌさま」に守ってもらうためだ。お札が庶民の手元に届くようになったのは、紙が流布し、文字が頻繁に使われるようになった江戸時代からだというが、その前はどうだったのだろうか。人がオオカミに抱く信仰は、お札という形をとるよりもかなり古いものに思える。

そうした問いを携え、映画の向かった先が秩父の宝登山神社だった。ここでは「お箱」と呼ばれる木箱を神社から借り受ける風習があり、土地では「お犬替え」と呼んでいる。この「借りける」という行為が気にかかった。お箱は年に一度神社から借り受け、お返しする。こうした「やりとり(貸借り)」を見ると、かつてはオオカミの骨そのものを貸し借りしていたのではないかと想像したくなる。古代まで時代を遡れば、人間はオオカミの骨を装身具にしていたというが、骨を身につけるという行為が幾多の変遷を辿り「お箱」という形態をとりながら貸し借りをすることになり、やがてお札として配られるように変わったものかもしれない。

お箱 【埼玉県長瀞町】 映画「オオカミの護符」より


オオカミの護符 〜里びとと山びとのあわいに〜
2008年完成作品/114分
製作助成:文化庁
受賞:平成20年度文化庁映画賞 文化記録映画優秀賞 ほか
       

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