文明開化とリボン

皆さんには「リボン」にまつわる想い出はありますか?

茅葺屋根の家に暮らした幼い日、祖母の針箱にしまわれていた色とりどりの「リボン」が今も淡い憧れとして私の心に残されています。その美しいリボンは、盆や正月、彼岸などに町から帰ってくる親戚が携えてきた手土産を飾っていたもので、シルクサテンや別珍のリボンの上品な質感は、まだ見ぬ西欧の文化を身近に感じさせてくれるものでした。

『谷中とリボンとある男 展』の案内が届いのは、昨夏のこと。谷根千工房の山﨑(やまさき)範子さんからのお誘いでした。山﨑さんたちが長年にわたり、見守り続けてきた谷中の「のこぎり屋根」の工場が取り壊され、工場跡から100余点の織物の資料とともに100年前のリボンの見本帳やリボン現品が出てきたというのです。谷中の町並みに馴染み、愛されてきた「のこぎり屋根」の建物は、日本初の国産リボン工場だったことがわかったのです!

その名は「千代田リボン製織」。経営者であった渡辺四郎は、播州明石から江戸日本橋に出て海産物商として財をなし、のちに「東京渡辺銀行(第二十七国立銀行)」を設立した渡辺治右衛門の一族だといいます。

明治時代のリボンと聞き、色褪せたり撚れたりと、古色蒼然とした品々を思い浮かべていたのですが、会場の千駄木「古書ほうろう」で目にしたリボンは、まるで新品のような鮮やかな色彩を放ち、なおかつ極めて高度な技術で織られたものとわかりました。

それらの多くは、渡辺四郎が欧米で収集したリボンだそうですが、精緻な絵画のようで、その精巧さに息を吞みました。谷中の「千代田リボン製織」で実際に織られたリボンは、素朴な風合いのものでしたが、「文明開化」の潮流の中で芸術品のような西欧のリボンを目指す心意気が伝わってくるものでした。

今回、これらの貴重な「リボンたち」が見られる内覧会が行われます。限定公開で、事前の申し込みが必要ですが、会場の「島薗邸」も文化財としての価値も高く、一見の価値ありです。是非のお出掛けをお薦めします。

(文:小倉美惠子)


織物とは思えないきめ細かさとその色合い。まるで肖像画のような写実的な表情は、近代化を目指す日本人に強い衝撃と憧れを抱かせたことでしょう。


*来訪の希望日時を下記連絡先にご連絡下さい。

催しもの 内覧会「リボン&リボン資料」
開催日 2017.5.21 (日)14:00~15:00 / 15:30~16:30
  2017.5.22 (月)18:00~20:00
会場 島薗邸(東京都文京区千駄木3−3−3)
アクセス 東京メトロ千代田線 千駄木駅より 徒歩5分
詳細:文化遺産オンライン 【WEBSITE】
催し物詳細 月刊のこぎり屋根 【WEBSITE】
お申し込み & お問い合わせ 谷中のこ屋根会: nokoyane@yanesen.com
080-6504-7442(きくち)または 080-6670-0142 (やまさき)
 
 
諏訪式【近代 ものづくり編】は、そもそも「創刊号」に掲載された特集記事です。そもそも第2号は、2016年10月にようやく発行しました。2号では諏訪式【近代 人づくり編】と題し、岩波書店、筑摩書房などの出版業や諏訪にゆかりのある文人に焦点を当て、諏訪のもうひとつの顔、文化的側面を浮かび上がらせています。ともに、ささらプロダクションのウェブストア Tamaca にて販売中。

 

 *次号「そもそも 第3号」の「花笑み」のコーナーで、谷根千工房が25年の長きにわたって発行し続けてきた地域雑誌『谷中根津 千駄木』をはじめ、D坂シネマなどの活動やささらプロとの出会いなどについて紹介する予定です。こうご期待!

YOU MAY ALSO LIKE