岩波茂雄(右から4人目)
夏目漱石の遺作「明暗」の発売日
「写真でみる岩波書店80年」より

出版王国の背骨 

 「セイコーエプソン、東洋バルブ、チノン。名前知ってる会社がたくさんあるなぁ。なんでだろう」という、極めて単純な興味から分け入った「諏訪式。第一章近代ものづくり編」。「東洋のスイス」と呼ばれた内陸工業都市・諏訪の地表を掘り下げると、まずは、近代日本が初めて世界を相手に国際市場に乗り出した「製糸業」という分厚い層に行き当たる。そこには前近代と近代がぎこちない形で共存する現代社会の原型があった。その製糸業を土台として生まれた精密機械産業からは、外の力を引き入れながらも「主体性」を保ち続けようとする諏訪人の軸足の強さが見えてきた。同じ工業地帯でありながら、重厚長大産業の基地だったわが川崎市と対照的なあり方にハッとさせられることの連続でもあった。近代工業が効率化、グローバル化を進める傍らで、蚕の繭を煮て糸を繰る「母の背中」を心に刻む諏訪人の姿が印象に残っている。

 第二章は「近代 人づくり編」。岩波書店創業者の岩波茂雄をはじめ、島木赤彦、平林たい子、新田次郎、武井武雄と、私でさえもその名を知る文化人を数多く輩出し「出版王国信州」の骨格を作ったともいえそうな諏訪のもう一つの姿。今回は岩波茂雄と島木赤彦という明治初期に生まれた二人の人物に焦点を当てながら、諏訪の「人づくり」の秘密に迫りたい。

【つづく…】


そもそも第2号 

【特集】第2章 近代 人づくり編 出版王国諏訪

岩波書店の創業者岩波茂雄、筑摩書房の創業者古田晃、みすず書房や古今書院など多くの出版社が諏訪圏の出身者によって起こされています。なぜ諏訪からなのか。 Tamaca にて販売中。
取材・執筆者
ささらロゴ 太(印刷)
小倉 美惠子 ささらプロダクション代表/作家
1963(昭和38)年、神奈川県川崎市宮前区土橋生まれ。アジア21世紀奨学財団、ヒューマンルネッサンス研究所勤務を経て、2006(平成18)年に(株)ささらプロダクションを設立。2008年、映画「オオカミの護符―里びとと山びとのあわいに」で文化庁映画賞文化記録映画優秀賞、地球環境映像祭アース・ビジョン賞を受賞。2010年「うつし世の静寂(しじま)に」を劇場公開。2011年「オオカミの護符」(新潮社)を上梓。現在、映画「ものがたりをめぐる物語」を製作中。

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