残念ながら受賞には至りませんでしたが私たちの映画について知ってもらえる良い機会になったと思っています。また、“教授”の音楽を使ってショートフィルムを作ったことはとてもエキサイティングな体験であり、何よりも楽しかったです。一人の作家として久々に小躍りしました。

フェイスブック上で「いいね」をしてくれた皆さん、ありがとうございました。辛口のコメントをくれた人も。作品を観て、受け止めてくれる人たちがいる。作り手にとってそれほど心強いものはありません。とても励まされました。

私は映画を作っている時に、まるで真っ暗な夜道(街灯も何もない)を一人で歩いているようなとても寂しく不安な気持ちにかられることがよくあります。映画はとても多くの人と関わりながら作っていく仕事でもありますが、その一方でとても個人的な仕事でもあると思っています。特に編集作業はそう言えるかもしれません。もちろん、編集においてもいろんな人のアドバイスや感想などを聞きながら仕上げていく共同作業の部分はあります。

しかし、何もないところからフィルム(デジタル映像)を切って繋ぐという点において、とても個人的な作業なのです。真っ暗な夜道ですから、自分の行先が見通せるわけではありません。道のところどころには深い穴がぽっかりと口を開けています。どれだけ気をつけて歩いていても、そうした穴にいとも簡単に落ち、思わぬ方向に連れて行かれることがよくあります。穴は私の気持ちを全て把握し、先んじて私が歩く方向に動いているのではないかと疑ってしまいます。そんなことを考えるのは私だけかもしれませんが…

きっと体も顔も傷だらけで泥まみれですが、暗闇の中なので自分でもよくわかりません。膝を付き、立ち止まることもしょっちゅうあります。ため息を漏らし、しばし、ぼーっとしてしまいます。気持ちを切り替えるにはそれなりの時間がかかります。やがて、このままここに止まっていても仕方がないと、立ち上がり歩き出します。それでもすぐにまた穴に落ちてしまうのです。前よりも大きく深い穴に。そこから復活するためには、さらに多くの時間を必要とします。

「ものがたりをめぐる物語」という映画の編集は、そうした試行錯誤の3年でした。ようやく地上に上がってほのかな光を感じたとき、たまたま、WEBで “教授”のコンペを見つけ、応募したのです。そしてこの世界のどこかに自分の映画を観たいと待っている人たちがいる、そう思える人の存在も改めて実感することができました。それはとてもありがたいことです。

コンペの結果が出るまでの3ヶ月余り、制作を中止しましたが、来年から仕上げに向けて再始動します。「ものがたりをめぐる物語」は2部作。前編と後編共に各1時間余りの作品を予定しています。まずは撮影でお世話になった長野県諏訪圏内、岩手県陸前高田市の人たちにお届けし、その後、各地で上映していきたいと思っています。多くの人に見ていただける機会はそれほど無いかもしれませんが、今後の仕上げ、上映に向けての進捗状況はこの場で随時お知らせしたいと思っています。

来年は皆さんに映画を届ける年です。

由井 英(映画監督)

Tamaca のおすすめ商品

YOU MAY ALSO LIKE