オオカミの護符に守られた婚礼の漆器

2019.3.3 春ものがたり

ロンドンに在住の友人から、「谷戸の下」ってどこにあるの? と尋ねられました。「夏に一時帰国する予定だから行ったみたい。」とのことでした。

確かにそう思いますよね。まだ、どこにも場所を表示していませんから。いったい、谷戸の下はどこにあるのでしょう。いずれ、きちんとみなさんにご案内したいと思いますがもうちょっと待ってくださいね。まだ秘密にしておきたいのです。

というのは、物語を紐解くように徐々にお知らせしたいのです。皆さんもどこにあるのか、楽しみながら想像してみてください。そのように谷戸の下のことを気にかけてくれると嬉しいのです。ひょっとしたらあなたのお住いの側にあるかもしれません。近くに一枚の畑はありませんか?

さて、その一枚の畑の側には白い漆喰壁の蔵があります。地元では蔵を持っている家はもうほとんどありません。その蔵の扉には今でも「オオカミの護符」が貼ってあります。micoさんは、「谷戸の下」のみこちゃんの頃からこの護符をじっと見ていたそうです。

「いったい、このお札はどこから来るのだろう」

そんな素朴な疑問から、「オオカミの護符」の映画を作り、本を出版しました。

その蔵から出てきたのが写真の漆塗りの器です。富士山や松などが描かれていたり、鮮やかな朱塗りの器であることから、おそらく婚礼の儀式に使ったものでしょう。数がたくさんありますね。ここからいろんなことが想像できます。

まず、この器は家族だけで使うのものではないことがわかりますね。集落のみんなで使っていたものです。かつて婚礼は、家の座敷や奥座敷に人を招いて行われました。家に集落の人みんなが集まってお祝いをしたのです。

みんなで使うものが、一軒の家の蔵に保存してあったことは注目したいところです。何故ならば、蔵は家族のものだけでなく、集落全体で使うものもたくさん保存してきたからです。そうした「みんなの大切なもの」を「持ち回り」で各家々に巡り渡しながら守ってきました。それによって集落全体の絆が育まれていったとも言えるのかもしれません。

漆器をよく見ると、ひとつひとつの形が微妙に異なっています。手に取ると、手作りのものだけが醸し出すあの独特な温もりがじんわりと伝わってきます。かつて婚礼の祝いの席でこの漆器にはどのような料理が盛り付けられ、この漆器の前でどんな会話が交わされていたのでしょう。思わず、昔の人のことを想像してしまいます。

実はこの漆器、10年ほど前に処分されるところでした。私とmicoさんで蔵から引っ張り出し、ほこりが被った漆器をひとつひとつ丁寧に拭きました。当時、これらの漆器の使う当てもなかったのですが、(これから結婚するつもりもなかったので…)なんとなく処分できないという気持ちだけで、今まで保存してきました。不思議なもので、朱塗りの鮮やかな色が復活すると、きっとこれを使ってきた昔の人も喜んでいるのではないかと思うのです。

谷戸の下では、この漆器を一部でも使ってお料理を出したいとスタッフみんなで考えています。漆器にも会いにきてくださいね。

オオカミの護符に守られた婚礼の漆器”に 2 件のコメント

  1. 婚礼の漆器は本当に美しく、見とれてしまいました。お料理の楽しみと一緒に、蓋を開けた時に初めて見える内側のデザインのサプライズもあって本当に特別な器だと思います。集落でこんなに高価なものを大切に共有していたということは、とても強い絆と信頼関係があったのですね。

    今は近所の人との関係も希薄で、逆にネットのような仮想空間に繋がりを求める人が多いから、世の中に孤独な人が増えている気がします。

    1. kazuちゃん

      ささらプロのHPをいつもフォローして下さってありがとうございます。あの器が最後に使われたのは、私の両親の結婚式(昭和33年)の時だったので、かれこれ60年ぶりくらいに日の目を見たことになります。

      この器たちの存在を改めて意識したのは、民映研の撮影がきっかけでした。撮影に使う古い器を探して、我が家の土蔵に探しに来られたのです。時を超えて人を繋いでくれる器の力をありがたく思うと同時に、今、お店で買うものは、次世代にまで伝えられるのだろうか…と思うと、こころもとないですよね。

      これからも、ささらプロのサイトに遊びにいらして下さいね!お待ちしています。

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