今年の天然氷、危うし!?

信州の実家へ所用で帰省した折りに、八ヶ岳の麓で天然氷作りに励んでいる八義(長沢池)に立ち寄った。氷おじさんこと、高橋さんがいつものようにフレンドリーに迎えてくれた。

しかし今回の高橋さんは、まるですっきりと晴れ切らない空にどんよりとした雲が浮んでいるような表情だった。しかもちょっとグレーの暗い雲だ。悪天候になるのは間違いないが、問題は「どの程度悪くなるのか」先行きが見えないといった感じだった。

「やばいっす」と氷おじさんは言った。

氷おじさんに会ったことのある人は理解できると思うが、氷おじさんの喋り口調には、人を朗らかにさせ、にこやかにさせる独特の特徴がある。私はいつものように半分笑いながらまるで懐かしい昔話でも聞くように氷おじさんの話に耳を傾けていた。何が本当にやばいのかを察することより、喋り方の響きが心地よく、おかしみも感じていた。しかし話を聞いているうちに、本当にやばそうなこと起きているのだと感じるようになった。

氷おじさんによると、天然氷を作っている代表的な地域が三ヶ所あるそうだが、この冬、どこもまだ氷を切り出しているところはないという(2月4日現在)。暖冬の影響で気温が全く下がらないそうだ。そのため何度も氷を作り直しているという。

幸い、八義では、3年前から標高が1000mを越す清里(清里池)にもう一つ製造所を設けており、そちらで一回だけ切り出すことができた。

「清里の製造所に行ってみたい」と私がいうと、氷おじさんはすぐに案内してくれた。


実家に帰る際に、清里池の前の道をよく車で走っていたのだが、まさかこんなところで天然氷を作っているとは思いも寄らなかった。氷をキューブ状に整形する仕上げの作業も見せてもらった。なるほど、この作業を経て谷戸の下にも天然氷が届くのかと納得できた。


何事においてもそうかもしれないが、この仕事もまた、白州の道の駅でかき氷を販売し、お客様と接する高橋さんたちの「表の顔」をみているだけではその真髄を理解することはできない。表があれば必ず裏もあるのだ。暖冬とはいえ、天然氷作りは厳しい寒さの中で行われる過酷な仕事だと改めて感じだ。夜中に行われることもあるという氷の切り出し作業は、尚更のことだろう。

長沢池は再び水が張り直され、凍り始めている。氷おじさんによると、今回が最後の挑戦になるという。これから日照時間が長くなり、陽の光が差し込んでくるため、たとえどんなに気温が下がっても凍らないという。天然氷作りは「ただ寒ければできる」ということではなさそうだ。

天気予報によるとこれから一週間ぐらいは氷点下に気温が下がる日々が続くという。そこで私が、

「今週は冷えるようでよかったですね」と氷おじさんに言うと、

「普通っす」と返してきた。

「?」

「いや、いや。冷えるんじゃなくて、普通に戻ったんっす」と氷おじさんは言った。

「確かに」と私は頷いた。

「また、谷戸の下のみんなと氷かきの研修に来ます」と、氷おじさんとの再会を約束し、八ヶ岳を後にした。