TOP >  シネマセッションのご案内(起案)

イラスト:近藤圭恵

これまでの観光を見直したい地域に根ざした宿や旅館、
料理や商品のみならずその志を伝えたい店主、
本の魅力を伝えつつ人のつながりを模索しているブックストア、
これまでとは異なる視点や発想で社会との接点を探っている企業、
学生に答えではなく問いを導きたい教育関係者のみなさま
人が集う新たな場として美術館、博物館などをお考えの学芸員のみなさま


私たちの映画を使って「シネマキュレーター」になりませんか。
私たちは「シネマセッション」と名づけた新たな映画を観る場を
みなさまと一緒に作り上げていきたいのです。

◉「シネマセッション」の試み

シネマセッションで大切にしたいのは「即興性」と「偶然性」です。ミュージシャンが自由に即興的に演奏するジャムセッションを映画を観る場で鑑賞者と共に展開してみたいのです。そう考えると、映画はみんなが集い演奏する舞台であり、シネマキュレーターの話はイントロです。そのイントロにどのような楽器を使い、リズムやメロディーを乗せてくるのかは鑑賞者ひとりひとりのお話次第というわけです。そして最終的にその場でどのような音楽が奏でられるのかは予測できるものではなく、まさに即興的であり偶然性の賜物です。

映画とシネマキュレーターと鑑賞者が三位一体となり織りなすその場限りの二度と同じ体験ができないセッションをみんなで楽しみたいのです。言うまでもなくシネマセッションは映画を観ることから始めますが、従来の上映会とは異なり、「独立した催し物」と考えています。というのは、例えばこれまでの上映会で監督が質疑応答を担い、鑑賞者に映画を解説していたような立場とは全く異なる関わり方を私たちはシネマキュレーターに望んでいるからです。どのような催し物として映画を観る場を企画し、どのように映画を見た後のセッションを初め、展開し、終えるのかは全てシネマキュレターに委ねられています。

◉「シネマキュレーター」に求めること

私たちがシネマキュレーターに求めるのは、映画の魅力や見所などを伝えることではなく、まずはシネマキュレーター自身が映画の「絵解き」をし、あなたの視点を皆さんに紹介することです。「あなたが映画をどのように観たのか」、その視点が最も大切です。なぜならば、それがイントロだからです。イントロなくしてセッションを始めようがありません。むしろ全てのジャムセッションがそうであるように、イントロが全てです。イントロによってシネマセッションの方向性や深まり、面白みがほとんど決まってしまうからです。そういう意味において、シネマキュレーターには映画に描かれているテーマを理解するのみならず、その裏に隠されたメタファー(作り手が本当に伝えたいものであることが多い)、時には映画の作り手が「気付かずに描いてしまっている何か」まで掴み取っていくような独創的な視点が必要です。そう考えるとシネマキュレーターの役割は、一般的な司会者やファシリテーター、映画のナビゲーターや評論家の役割をもはや超えているように思えるのです。

映画をきっかけに「人と人を繋ぐ」という意図や「面白い場を作り上げたい」と思う気持ちも捨てる必要があります。できることはイントロを奏でるように、自分の「絵解き」を語り、「問いかける」だけです。そしてあなたの問いかけに、誰かが応えてくれる(必ずしも「答え」ではない)のをじっと待つことです。やがて鑑賞者から折り重なるように奏でられる言葉がシネマセッションという場をあなたの予想しない方向へと動かしたとしても、その動きを意図的にある方向へとコントロールするのではなく、むしろあなたが「身を委ね寄り添っていく」気持ちを持っていただくことも大切です。私たちは映画を起点としながらも映画を離れて話が展開していくことを望んでいます。

◉シネマセッションとは、どのような「場」なのか?

映画は今を生きる私たち一人一人の姿と心を映し出す「鏡」だと考えています。絵解きをするのはあくまでも映画を深く理解するためではなく、そこに映し出された自分たちの有りのままの姿を覗き込むためです。映画を通して映画の内容でなく自分たちの姿を観れるようになるためには「ある種の体験」が必要です。シネマセッションはそれを体験をする実践の場であって欲しいと願っています。

不思議なことに、同じ映画を見ても人によって映画の見方は全く異なります。それはテクニカルな映画の見方を心得ているのか否かというよりは、そもそもそれぞれの鑑賞者の関心が異なっているからだと思います。考えてみれば、同じ映画を見ながら人によって観ているポイントが異なるのは面白いことです。しかしそうしたことを体験するためは、他の人の視点と比べてみなければわからないし、自分の見方を他の人が理解できるよう表現しなければ他の人も実感しようがありません。すぐに言葉にならない「感情のゆらぎ」をいかに表現するのか、自分と対立する価値観に直面した時それをどのように受け留め、言葉を重ねて深め、あるいは昇華していくのか。さらには、相手の言葉にならない言葉を汲みっていく姿勢も必要でしょう。つまり、シネマセッションでは人としてのコミュニケーション能力や人と人との関わり方も問われることになります。

映画の正しい見方というのは存在しないと考えています。映画を自分を写し出す鏡と考えれば、そこには自分なりの見方があるだけです。誰もが気後れすることなく、不安に駆られず、いつも通り自分で心置きなく表現できる場、それがシネマセッションであってほしいと思います。そういう雰囲気を醸成していくことも大切でしょう。

◉シネマセッションの「かたち」

シネマセッションの主な構成メンバーとイメージ図を一覧にしてみました。

・「点と線」:オーナーがシネマキュレーターを兼ね、鑑賞者と対話をする場合
・「緑の三角形」:オーナーがシネマキュレーターを招聘する場合。
・「青い三角形」:オーナーが映画製作者(監督など)をシネマキュレーターとして招聘する場合。
・「四角形」:オーナーとシネマキュレーターがゲストスピーカーを招く場合。

シネマセッションの「かたち」は、以上の四つのスタイルに収まるわけではなく、むしろ斬新な「スタイル」を作ってほしいと願っています。

◉シネマセッションの「しくみ」

「しくみ」を先述の「かたち」で示したスタイル中から「四角形」を取り上げて説明します。場を提供するオーナー、映画を提供する映画製作者、即興的かつ偶発的に発想する参加者(映画鑑賞者)、そうした動きを見守るキュレーターが「四角形」スタイルの構成メンバーです。互いに互いの「持ち味」を活かしながら支えあっている「しくみ」であることが下の図から見てとれます。

映画が触媒となり、キュレーターがイントロを奏で、それに呼応するように参加者の言葉の音が重ねられ、その時、その場限りの音楽がオーナーの場で作り上げられていくためには、もうひとつ大事な要素があります。それは、なぜそこにみんなが集まってきたのか、その本当の意味を知ることです。映画を見るために集まってきたというのは単なるきっかけに過ぎないでしょう。

できれば、それは「個人の心に眠る社会的な課題」を共有する機会であったり、「人と風土との関わり」を考え直すきっかけになることを願っています。もちろん最終的にどのような音楽が作られるのかはシネマキュレーター次第で変わりますし、今から想像できることではありません。ですから、あくまでも私の個人的な「思い」としてあげておきたいと思います。ただし、何らかの思いや喜び、楽しみがみんなで感じられること無く、この取り組みを企画・運営するすべて人たちがいつの間にかそれを成り立たせることに囚われてお金を回らし、互いの持ち味や能力を利用するようになることは避けたいところです。

◉シネマセッションの参考例

スタイルとしては、「青い三角形」に当たると思います。つまり、場のオーナー(施設関係者)に映画製作者(監督)である私が招聘されてシネマキュレーターを兼ねてシネマセッションを開催した場合の例です。この時は、シネマセッションを「絵解き物語」と名づけていました。

取り上げた映画は「ものがたりをめぐる物語 前編 地下の国へ」です。61分の作品です。それをご覧いただいたあと、少し休憩を挟んでシネマセッションを開始しました。

ギャラリー櫟|伊佐ホームズ(東京、世田谷) 写真撮影:安岡花野子

映画から映像を切り出したスライドを用意し、それをもとに20分から30分ぐらい話をしました。スライドはイントロを奏でるために私が選んだ「楽器」です。肝心のイントロはというと…それぞれの場に応じて少し角度(奏でるフレーズ)を変えてみました。

(1)なぜ、この映画をつくったのか。
(2)対立する価値観を超えて

わたしの「イントロ」に加えて参加者とのセッションはおよそ1時間に及びましたがどちらの場でも時間が足りないぐらいの印象を持ちました。同じ映画でありながら、二つの場で同じ話が展開されることはありませんでした。私のイントロにすぐに音(言葉)が重ねられた場がある一方で、むしろしばらく沈黙があり、誰かが静かに音を奏で始め、最終的に壮大なシンフォニーを作り上げていった場もありました。それがわたしのイントロによって起こったことなのか、その場の参加者によるものなのか、他に理由があるのかはわかりません。

それがいかなる理由にせよ、私にとってとても新鮮な体験でした。ぜひ、みなさんなりの「イントロ」を奏で、みんなで思いがけない音楽を作り上げ、楽しんでほしいと思っています。

東京都埋蔵文化財センター(東京都、多摩市)

◉応募方法

下記の「応募フォーム」ボタンをクリックし、必要事項を入力してください。場を持つオーナー自身がキュレーターを兼ねるのか、オーナーがキュレーターとして映画監督を招聘するのかなど、いろんなシネマセッションのスタイルが考えられます。私たちが信頼に足るキュレーターをご紹介することもできます。ご希望のスタイルをご選択ください。しばらくお時間をいただくことになりますが、必ずご返信申し上げます。

なお私たちの映画をシネマセッションでご利用いただく場合、HomeTownNote(ホームタウンノート)という私たちが運営しているサイトに団体会員として登録していただくことになります。それによって、インターネットにつなぐ環境があればいつでもどこでも私たちの映画作品を視聴しご利用いただけます。具体的な会員登録方法やご利用の仕方はHomeTownNoteのフッターメニュー内「初めての方へ」「使い方ガイド」をご覧ください。

いずれ各地で開催されたシネマセッションの様子がHomeTownNoteに投稿され、みなさんと交流できることを願って。

映画作家 由井 英