ビーナスライン|下諏訪町

国土と風土。本作品はこの二つを、明確に分けた。すごいことだ。そうしなければ見えないものがある。分けることで「風土」が見えてきた。風土は単なる風景ではない。私たちはふだん地上の風景しか見ないが、個々の身体が風土とつながることで、風土は自らの中で風の彼方にも土の下にも広がり深まる。しかし、いったん風土から切り離されてしまった私たちの生命と身体を、どうやって結び直そうか?

多分その方法が物語であり映像だ。甲賀三郎の物語はオデュッセウスの物語と重なる。国土は国や自治体という分け方に従って帰属を求めるが、風土は生命を遍歴にいざなう。この物語と映像に乗り、風土に向かって自らを開いていきたい。心からそう思える作品である。