写真:諏訪湖

少年時代を信州で過ごした私は、 毎日諏訪湖を眺めて暮らしていました。地底には太古につながる秘めやかな物語が存在していたとは露知らずに。物語は自らに問いかけるように静かな語り口で進行しますが、 そのストーリーはじわじわと私の身体に浸透してきます。私はいま近代主義に覆われた環境と、精神の深部に宿る失われた風土への憧憬との狭間を彷徨っているからです。正しく私は戻ることもできない、さりとて先に進むこともできないのです。